2020年10月に8畳2間で164匹の犬が飼育されており、その様子が悲惨であった様をニュースを通じて知った時衝撃が走った。

エサを食べ損ね、弱り切った犬が別の犬のフンを食べて飢えをしのいでいる―――
やせ細った犬がまるで満員電車の中にいるように、ひしめき合っている。犬は中型程度で餌不足のため、犬同士他の犬のフンを食べて命を繋いでいたと思うと胸が痛む。
この犬達は県が「公益財団法人どうぶつ基金」に不妊手術の協力を要請したことで、どうぶつ基金が出雲保健所などと連携し不妊手術とワクチンの接種、ノミ駆除、寄生虫駆除、傷病治療等を実施した。
164匹の犬達は12月上旬には県外の動物愛護団体や愛犬家らに引き取られたり、一時預かりとなったというから一安心だ。
多頭飼育崩壊の問題に大きく貢献したどうぶつ基金は、戦後間もない1948年頃から活動を続けている公益財団法人で、内閣府より承認を受けている。
行政による犬や猫の殺処分ゼロ
の実現に向けて人と犬や猫が幸せに共生できる社会を目指す、どうぶつ基金とは一体どのような活動を行っているのだろうか。
創設者である富岡操が上記の目標を掲げて70年以上。意思を継ぎながら殺処分ゼロに向けて活動を行い続ける、どうぶつ基金を紹介させて頂こう。
駆け込み寺から始まった活動。創設者の意思を受け継ぐ

公益財団法人どうぶつ基金の創設者である富岡操さんは、戦後間もない1948年頃に横浜市にある自宅で飼い主に見捨てられた犬猫の駆け込み寺を始め1,000頭以上の保護を続けていた。
1988年83歳の時に自身の財産を提供し、当財団の前身である「財団法人横浜動物福祉協会」を設立。
その後、神奈川県愛甲郡清川村の財団シェルター施設に住み込みで働き、96歳で亡くなるまでの半生を犬や猫の救命と保護に捧げた。
彼女は亡くなるまで犬や猫の救命と保護に人生を捧げた方だが、聞くところによると特別動物を飼うのが好きだった訳ではないという。
保健所に連れて行かれる寸前の、幸薄い動物たちを目にするとたまらなくなってしまうのです。
情に厚い方だからこそ、犬や猫を見捨てることが出来なかったのだろう。
どうぶつには人間の愛情が伝わるーこんなエピソードも

某日、家の門を閉めようと表に出たところ滑って転んでしまった富岡操さん。手と足を骨折したが、この時既に深夜を回っており声を出しても誰も気づいてもらえない。
そんな彼女を助けてくれたのが、癌で右の前足を無くした大きな日本犬だった。
庭から彼女に駆け寄った日本犬は、「つかまれ」とでも言うように体をぶつけてきたので、その背中につかまるとオンブで玄関まで連れて行ってくれたという。
富岡操さんが犬や猫を想って行っていた行動は言葉こそ通じ合えなくとも、心は伝わっていたと分かるエピソードの一つだ。
2010年公益財団法人として内閣府より承認を受ける

財団法人横浜動物福祉協会から「財団法人富岡操動物愛護基金」と名称を変更し、行政による犬や猫の殺処分ゼロの実現に向けて、TNR無料不妊手術をはじめとするさまざまな事業を行ってきた。
2006年に佐上邦久氏が4代目理事長に就任、名称を「財団法人どうぶつ基金」に変更し、2010年に公益財団法人として内閣府より承認を受けて現在に至る。
行政による犬や猫の殺処分ゼロ
これは創設者である富岡操さんが発足当初からの目標であった。
人と犬や猫が幸せに共生できる社会は必ず実現できるという強い想いを持ち、70年以上経った今でも遺志を引き継ぎながら活動に励んでいる。
一代限りの命を見守るーどうぶつ基金が推進しているTNRとは

どうぶつ基金の活動の中に2005年から動物愛護事業の基軸として行っている「さくらねこ無料不妊手術事業」がある。
この活動は、飼い主のいない猫に対し、「さくらねこTNR(Trap/捕獲し,Neuter/不妊去勢手術を行い,Return/元の場所に戻す,その印として耳先をさくらの花びらのようにV字カットする)」を行うことで繁殖を防止する内容だ。
繁殖を防止することで一代限りの命を全うさせることが出来るため、飼い主のいない猫に関わる苦情や殺処分減少に寄与する活動となる。
猫は1回の出産で5~7匹の子猫を産み、1年に3回出産できる。TNRをゆっくり行っているのでは残った猫からあっという間に繁殖してしまう。
従来型の地域猫活動では、話し合いをしている間に猫の頭数が倍増してしまうため「TNR先行型地域猫活動 」の推進を行い、100%の猫に避妊・去勢手術を目指している。

さくらみみは不妊手術済みのマーク

不妊手術を行った証として、どうぶつ基金では耳先をちょこんと切り、さくらのような形の「さくらみみ」にして元の場所へと帰す。
耳先のカットは可哀想と思う方もいると思うが、この目印がないと捕獲や麻酔のリスクを再度行う結果にも繋がりかねない。実際に2014年に63頭の猫がみみ先カットの目印がなかったことで2度捕獲された過去がある。
人社会の片隅で生きる野良猫たちが生きていくためには、不妊手術を施し、これ以上増えないことを主張しなくてはいけない。その手助けが「さくらみみ」なのだ。
耳先カットは命の尊重と優しさの印
年に3回の出産が可能な猫は繁殖力も強いので、子猫を産み増えてしまえば殺処分する必要性も出てくる。それが、不妊手術を行うことで猫たちが命を全う出来る可能性が高まるのだ。
地域の中で生きていく耳先が少し切られた猫は、厳しい現実社会にヒトの心の温かさをともしている。

ボランティアの協力の下、捕獲器で捕まえ、協力獣医が避妊去勢手術を行う。そして、元いた場所に戻し猫たちは変わらない日常を過ごす。
耳先が切られた猫は、猫たちに生きて欲しいと願う人の心の表れ。
せっかく自由に生きている野良猫を捕まえての手術は残酷と思うかも知れないが、手術をしなければもっと残酷な運命をたどるかも知れない猫を救えるのが「さくら耳のさくらねこ」。
この想いが世の中で見えるようになることで、実際に殺処分される猫が減っているのも事実。さくらねこの後ろにはこの子の一生を見守りたい人の優しさが隠れている。
無料不妊手術には協力が必要不可欠

どうぶつ基金では、さくらねこTNRの他に多頭飼い崩壊で保護する結果となった犬などにも不妊手術を行っている。
手術の対象となる犬猫は予算や病院の受け入れ頭数・公平性・必要性などを総合的に勘案して行われていて、公平性を保つため詳しくはお伝えできないが、必要と判断された場合は完全無料で手術を行う。
殺処分に直面する命を救うためには、長期的な継続した活動が必要不可欠となる。
具体的には、

支援額(毎月) | 一日当たり | 出来ること |
---|---|---|
2,000円 | 66円 | 毎月一頭の猫の去勢手術 |
4,000円 | 130円 | 毎月一頭の猫の避妊手術 |
5,000円 | 166円 | センターから引き出した犬猫の救助 |
どうぶつ基金への寄付は寄付金控除の対象となっているため、所得税、法人税、相続税において、それぞれに定められている条件を満たすことで、優遇措置も可能。
一日に換算すると缶コーヒー1本分の値段で、犬や猫の命を救えるのだ。
どうぶつ基金が無料で不妊手術ができるのも、離島での一斉手術や多頭飼育崩壊の緊急案件に迅速に対応できるのも、支援者からの継続的な寄付があるからこそ。
毎月2,222円から始められる「さくらねこサポーター」は猫の無料不妊手術に限定して使用されるほか、任意の金額による寄付は犬や猫の殺処分ゼロ実現するため、さまざまな活動に使用される。
この活動に賛同した方は毎月の支援を検討して頂きたい。
殺処分ゼロを目指してー今後の目標は?

戦後間もない1948年から創設者の意思を継ぎながら殺処分ゼロを目指している、どうぶつ基金。今後の目標について聞いてみた。
(編集部)直近の目標を教えて下さい。
今後の目標は、より多くの方々にどうぶつ基金の活動を知ってもらい、継続的にご支援していただける方を増やし、年間通して協働ボランティアの皆様へ無料不妊手術チケットを安定的に届けていくことです。
2019年度に無料不妊手術チケットによって誕生した「さくらねこ」は11万頭を超え、2020年10月時点で累計14万頭に達しています。2021年度に累計20万頭を達成できるよう、さらに活動に力を入れてまいります。
佐上邦久理事長から一言

コロナ以降、多頭飼育崩壊による救済を求めるSOSが連日、全国の行政から届きます。どうぶつ基金では毎年、多頭飼育崩壊救済を多数行ってきましたが、今年の多さは異常事態と言えます。
どうぶつ基金は一般の皆様一人ひとりにご協力をお願いして活動を行っています。理事長の私をはじめ役員は無報酬、出張手術などにかかる飛行機代やホテル代は全て個人負担です。
皆様からのご寄付を一円も無駄に使わないように、爪に火を灯すような節約をしていますが、まだまだ深刻な資金不足が続いています。皆様のご支援が必要です。

殺処分される猫や犬にはヒトカケラの罪もありません。
心なき人によって遺棄や虐待を受け、明日の命さえわからない厳しい環境に身を置くことになってしまったのです。不幸な犬や猫を救うために、できるだけのご寄付でご協力いただければ幸いです。
公益財団法人どうぶつ基金
理事長 佐上邦久
今回、さくらねこ無料不妊手術を中心に殺処分ゼロに向けて活動を行っている、どうぶつ基金のご協力の下記事を書かせて頂いた。
創設者の意思を継ぎ、地道にコツコツと歩みを止めないその姿に感動さえ覚えた。殺処分ゼロという目標は大きな壁に見えるが、皆が一つになれば実現できると信じている。
どうぶつ基金の活動に賛同できる方は、支援を検討して頂けるとありがたい。
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